近年、歴史的建造物に対して強い関心が寄せられるようになり、文化遺産として近代建築物を保護する機運が高まっています。
弘前公園三の丸の一角に位置する弘前市民会館は、日本の近代建築の巨匠、熊本では県立美術館本館で知られる前川國男氏の設計による代表的な作品として、昭和39(1964)年に竣工しました。市立博物館とともに弘前城跡(弘前公園)の一角にあるという環境も同じで、厚生会館とよく似ています。
平成25(2013)年にリニューアルオープン。「弘前市歴史的風致維持向上計画」により、弘前市民会館は「歴史的風致形成建造物」の一つに指定されたことで、国の支援を受けながら「まちづくり」の一環として修復されました。弘前市は様々な建築・文化遺産を『HIROSAKI Heritage』として活用し、貴重な観光資源となっています。
昭和29(1954) 年、日本で初めての本格的な公立音楽専用ホールとして開館し、令和6年に開館70周年を迎えます。厚生会館と同じく、石井聖光が設計した音響は“東洋一の響き”と今も国内外から高い評価を受け、『ヘリテージコンサート』と銘打った音楽会には、世界の名だたる演者が訪れ、名演を残しています。
個人の好みがますます細分化する現代、特に地方ではどこにでもある大規模な多目的施設を抱えこむより、特徴のある小・中規模の「箱」を活かすことがこれからの強みとなります。
厚生会館の座席を現行の消防法に適合させる改修を行うと、900席(立見含1000人ほど)となります。これは、人口減の時代の八代にあって、様々な演目に対応できて大きすぎない、ちょうどよい席数となります。
また、厚生会館は松浜軒や博物館と隣接していて、能楽や歌舞伎などの伝統芸能の大演目も上演可能であるところが、国際的な視点から見ても大きな強みです。大規模なコンベンション施設のホールでは利用料が高騰してしまい、市民が使えなくなった事例は多いのですが、厚生会館は市民から世界的演者までもが利用可能という、稀有な存在価値をますます発揮することでしょう。



八代市は2000人収容(経済界は5000人以上を希望)の多目的施設を整備し、厚生会館の機能を移転させると言っています。
現在、地方自治体が活性化を目的に「コンベンション施設」「多目的ホール」を建てることが流行っていますが、億単位の赤字を抱え込んでいるところが8割に上ります。世界から人が集まって学会が開催されたり、音楽イベントが開催されたりするはずだったものの、計画を下回る利用しかなく、維持費がかさみ、「ホールの活性化」のためにさらに税金を投入し続けるケースも少なくありません。身近なところでは、「熊本城ホール」が年数億の赤字を出し、複合施設ゆえの「振動・音漏れ」の「欠陥」も明らかになり、運用に制限がかかっています。ハコモノ建設は経済活動を一時的に活発化させるかもしれませんが、大きな公共支出は、他の公共サービスの減少、借り入れの増加、または増税につながります。
厚生会館は7億円で再開可能で、収益も十分にあげられ、社会教育費として許容できる範囲で運営可能です。新しい「2000~5000人規模のホール」整備には数百億単位の費用がかかり、しかも維持管理費は年間で億単位となります。


厚生会館は2回の大規模改修・耐震補強工事が奏功し、熊本地震に耐え、劣化度調査の結果でも、震度7までの地震に耐えるとされ、その躯体はこれからも利用可能です。小・中・支・高の生徒たちに、本格的なホールでレベルの高い鑑賞体験を提供することも可能にします。
八代市は令和4年5月、「SDGs未来都市」に選定されました。建築寿命を左右するのは適切な改修・根気強いメンテナンスだと言われています。厚生会館を適切に改修しながら長く使うことは、「SDGs未来都市・八代市」の具現化であり、まさにその理念にふさわしい風土を作ることなのです。

